31条の政策化(嶋村、神代)

嶋村仁志

6回子どもの権利条約31条のひろば2025

2025831日(日)18:00~20:00 オンライン

 

(嶋村)

OKYO PLAYという団体の代表をしている嶋村といいます。元々は、世田谷区の冒険あそび場や川崎市の「子ども夢パーク」というところで子どもが、場所と関わってきています。

そういう中で、遊びに来てくれる子どもたちとか保護者は「とても大事な場所だね」と言ってくれる人は多いのですが、「遊ぶことはそれほど大事じゃない」と思っている人たちは、逆に、そういう遊び場に来ることはありません。結局、街中のちょっとした場所で子どもが遊んでいると、「そんな遊びをしたかったら『冒険遊び場』に行きなさい」と言われてしまいます。そんな話がある中で、全国でいろんな子どもが遊ぶことに関わる活動や施設が広がることが大事な一方で、どうしたら、この社会で「遊ぶことが大事だね」と捉えられていくのかということを考えたくて、TOKYO PLAYという団体を作りました。2016年に法人化したので、もうすぐ10年になります。

今日は“政策提言”というテーマなのですが、僕自身がどこまで政策提言について話せるかは分からないところもありつつ、いろいろと試してきたことがあったり、未だに勉強中だったりすることもあるので、そうした部分をお話できたらなと思います。以前に、この会で話したことと重なる部分もあるかと思いますが、よろしくお願いします。

OKYO PLAの代表をしているほかに、保育者養成の大学で教えていたり、日本プレイワーク協会という団体の代表をしていたりします。今、子どもが、大人のいる場所でしか遊べないということが圧倒的に増えている中で、「子どもが遊ぶ」ということを大切にできる大人を増やしていかないと、せっかく遊び場があるのに、遊べる場所になっていないということも起きてきています。そこで、日本プレイワーク協会では、9月から基礎講座として3回の講座をするのですが、子どもと関わる大人のノウハウや知識というよりは、関わるっていう時の心のあり方の辺りを学ぶ講座を企画しています。

他にも、「川崎市子ども夢パーク」という遊び場で今も時々、お仕事をしています。もうひとつお伝えしたいのが、「とうきょうご近所道遊びプロジェクト」というTOKYO PLAYの取り組みです。これは、住宅街のちょっとした道路を歩行者天国にして、遠くから人を呼ぶっていうよりは、近所の人たちが顔見知りになれることで、子どもが少し遊んでいても大丈夫だよねと思えるような、そういうまなざしを向けられるような地域を作っていくことをねらっています。

この辺りも政策提言の方に関わってくると思っているのですが、「道路を遊ぶ場所で使っちゃいけないでしょう」と、道路使用許可が降りるのさえ大変な場所もあるので、いかに地域の子どもの育ちにとって大切かという話を出しながら、規制緩和を呼びかけていくということも、1つの政策提言の小っちゃいイシューなのではないかと考えています。

政策提言の話で関係してくるのは、子どもの権利条約のジェネラルコメント第17号のパラグラフ54ですね。締約国の義務という項目を見ていくと、「充足する義務により(中略)第31条に定められた諸権利の全面的享受を促進することを目的とした、必要な立法上、行政上、司法上、予算上、広報上その他の措置を導入するよう要求される」とあります。目指すところは、これが実現できるかどうかという話なのではないかと考えています。

そういう意味では、「こども基本法」ができたことが大きかったと思いますが、その際にいろんなところからの政策提言があって、少しずつよい形になっていくという進み方になるのだと思います。

みなさんの全国の取り組みの中でも、ぜひこの後にお聞きしてみたいのですが、実際に日本の各自治体で、31条について、子どもの権利に関する条例できているところもありますが、その条例に加えて、実際の施策としてどのくらいの予算が計上されているのか、どのぐらい仕組みとして取り入れられているのかという点はまだ集約できてないので、ぜひ、教えてほしいと思っています。

条例はあっても、その部分が実現されていなければ、言葉だけ書いてあってもダメだよねと言うことだと思います。例えば、東京都世田谷区の例では、平成27年のこども計画第2期の計画で「外遊び検討委員会」を行政が設置するということで、、こども子育て会議の部会の中で設置されたというところから始まっています。その中で、「外遊びの機会と場の拡充に区が取り組むこと」という文言が入ったことで、世田谷区では区の職員ではないものの、外遊び推進委員を設置する予算が確保されました。そして、その人が、世田谷区の中で商店街の人、町会の人、児童館の人、遊びの活動をしてる人などを繋いでいって、外遊びを広げていくという取り組みをしてきています。

それに加えてね、昨年度からの面白い取り組みとして、児童館の職員が「フローター」として役割を与えられて、児童館を離れて地域の関係者とつながり、新しい企画を地域の中で作っていくという仕組みがスタートしています。

みなさんの中でも、「仕組みとして取り入れているよ」というところがあったら、ぜひそういう事例を教えていただけたらと思います。

先ほど紹介した「冒険遊び場」も最初は草の根でした。それがいずれ社会の仕組みとして実装されることのよさもありつつ、一方では逆効果になるようなこともあります。ただ、社会全体が「大切だね」と思えるようになるには、どこかで「仕組みづくり」が進んでいかないといけないというところをどうとらえるかの議論は必要なのだと思います。

実際のところ、国連子どもの権利委員会からジェネラルコメント第17号が採択されるまでに至ったプロセスも、結局は「遊びに関する世界専門家会議というのを開催しませんか?」、そして「その報告書を国連の子どもの権利委員会に提出しませんか」という政策提言のアイデアから始まって実現したんですよね。

そこで、何かを変えるために手をつなぐこと。そして、いろんなことを調べ、整理して、こういうことを実現できたらいいという提案をすることを、これから遊ぶ権利の保障というテーマでどうやっていくかが課題になるのだと思います。

すでに内山さんの回でもやっていたかと思いますが、「遊びの世界専門家会議」はオランダのファンリーア財団がスポンサーとなって、世界の7団体で調査をしました。この時の日本の委員会には私もいましたが、阻害要因を4コマ漫画で表現していきました。結局、世界的に115の阻害要因がまとまり、それを変えていきましょうという話になっていきました。実際に調べていくと、南アフリカでは暴力が大きな阻害要因となっていて、レバノンでは人形とかサッカーボールに見せかけた地雷が置いてあるということが阻害要因になっていました。そういうことをどう世界に知ってもらうか。日本では、公園などの管理責任の問題がとても大きな阻害要因のひとつでした。そうした、子どもが遊べなくなっている日本の今の環境をどう知ってもらうか。そのために動くことが必要なのだと思います。

OKYO PLAYでも、2023年に「子どもが豊かに育つ社会のための緊急政策提言」または「遊びのマニフェスト」と私たちが呼んでる資料を作成しました。「子どもが遊ぶことは大切」と言われてはいるものの、実際の社会の仕組みの中では大事にされず、後回しにされていたりします。議員さんからも、「遊ぶの大事なのは分かるのですが・・・」と、政策課題に挙げづらいという話がありました。そこで、統一地方選挙の前に、なんとかこうした文書を届けられないだろうかと作成してみたのが、このマニフェストでした。初の試みで、うまくいかなかったこともたくさんあったのですが、ここにいらっしゃってるみなさんの方が、よりよい方法を知っていたかもしれません。

政策提言では、最初にユニセフのイノチェンティ研究所の「レポートカード16」のデータを出していました。先日、新しく「レポートカード19」が出ましたね。結局、日本は総合順位が20位だったのが、少し改善していました。精神的幸福度も37位だったのが32位になっていましたが、まだ生活満足度と自殺率では、圧倒的に結果が悪いままでした。できれば、自分たちで独自の調査したかったのですが、この政策提言ではすでにあるデータを集めたものを作りました。

遊びについては、こども環境学会の会長されていた仙田先生の有名なデータ出しました。また、「時間」「空間」「仲間」の「三間」がないということが、ずっと言われてきてます。そして、遊びの空間量が明らかに減っているとか、平日の小学生の外遊びの日数が0日という子が78パーセントもいることとか、1世代前、2世代前まではありえなかったような状況になっているということを伝えてきました。

また、こども家庭庁が発表した「はじめの100ヶ月の育ちビジョン」では、バイオサイコソーシャルという、「身体的・精神的・社会的」という3つの要素で子どものウェルビーングが成り立っていると示されています。子どもが遊ぶときには、大人が頼まなくとも、勝手に体を動かし、心も動かし、人間関係のレパートリーも増やしていくということで、遊ぶことを通して自分のウェルビーングを自分で整えていくことができるわけです。政策提言では、遊ぶということはそのぐらい大事なものだということを伝えているわけですが、実際には小学生の暴力行為の件数は増え、いじめのピークが低年齢化し、精神疾患で治療を受ける子どもの数がこの20年で10万人増えています。骨折も30年前の1.5倍になり、自殺者数は一向に高止まりし、不登校の子たちはさらに増えている状態では、「心と体と人間関係のウェルビーング整ってない」と言わざるをえない。とすると、子どもが遊ぶ環境が貧しくなっているということが密接につながっているのではないか。

「はじめの100ヶ月の育ちビジョン」でも、豊かな遊びと体験が不可欠と書かれていますが、具体的なメニューがあるかというと、まだそこまでには至っていない。これは、来年に国連子どもの権利委員会に提出する意見の内容にも関わるところなのかなとも思います。

この先、一度は政策提言として出したものの、「実際にどういう風にしていったらよいのか」ということについてのステップを示したり、実現可能なメニューを用意したりという点は足りなかったと思っています。なので、結局のところ、今回の政策提言は自治体の施策にまでは届かなかったというのが実感です。

あとは、時期のことも大きかったように思います。統一地方選挙なのであれば、選挙の前年の早ければ夏、遅くても12月までに欲しかったという話も聞かれました。また、行政であれば、来年度予算の決まり始める6月には欲しかったという話です。そして、共感をしてくれる職員の方に出会っても、他のことに職員が取られていて、「そっちに手が回らない」という話もありました。結局のところ、「法律を変えたいのか」「新しい法律を作りたいのか」、それとも「規制緩和をこうしたいのか」など、誰のどんなアクションが必要だったのかを示す解像度がまだまだ低かったなというのが反省点でした。

OKYO PLAYは、とっても大きい絵の実現を目指していて、子どもを育てをする人たちを支える子育て支援や、大人が子どもを育てるための教育制度と並んで、子どもが自ら育ちウェルビーングを整えていく遊びの環境の確保を社会の仕組みにしたいと考えています。実際に、海外では、そういうふうに子どもが遊べる環境の確保を恒常的な仕組みする国が少しずつ増えてきてます。

ここで示している例はイギリスのウェールズという国なんですが、2010年から子どもの遊び環境を充足させるということが義務になり、3年毎に遊びの環境アセスメントと改善計画の策定が日本でいうところの都道府県レベルの自治体で義務になっています。この仕組みは、その後スコットランドに飛び火していきました。イギリスの中では、イングランドという国が一番大きいのですが、大きいだけに動きは一番遅くなっています。それでも、「周りは動いてるのに、なんでイングランドはそれができないんだ」ということから、イングランドでもこうしたアセスメントの仕組みが必要では?という話が出始めています。

ただ、こうした仕組みが進んでいるということは、環境アセスメントをしなければいけないくらい子どもの遊びの状況が悪くなっていることの裏返しにもなっています。本来のところ、満足に日々の暮らしの中で子どもが遊べるような環境があれば、そんな仕組みを作らなくてもよいのです。ただ、日本でもおそらく、このぐらいのことをしないと本当に子どもが遊べる環境は回復できないのではないかとも思います。みなさんはどう思われるか分かりませんが、今も遊べている子どもたちがいる一方で、社会全体として、本気で取り組む人が不在な間にどんどんと環境は縮小していくのではないかという危機感を感じています。

ウェールズで政策になっている背景をみると、「質の高い遊び環境が、貧困による子どもへの悪影響を和らげる」という大義名分があることが分かります。そして、「経験の貧困、機会の貧困、将来の希望の貧困は、子どもに大きな影響を与える」ということも言われています。今、日本でも “体験の貧困”と称して、貧しい子どもたちへのプログラムの提供が盛んに行われていますが、そうした取り組みの質の部分も同時に考えていかなければならない時がきているようです。

イギリスでは、こういう動きを実現するまでに10年という月日がかかっています。だとすると、今から国や社会が「子どもが遊ぶこと」を大切にして、その環境が保たれるようにするような政府の仕組みができるまでには、調査をして、指針を出して、行動計画を出して、戦略を発表してと言う一連のステップ踏んでいかなければならないという重要性を学んでいるところです。

昨年に創設された「国際遊びの日」についても、ベトナムなど6か国が提案していますが、その前の段階から、いろんな人たちが集まって動いていたんですよね。IPAもその構成団体のひとつでした。ただ、IPAは最初に少し躊躇があって、「商業的なところと一緒に進められるのか」、「本来遊びとは呼べないものが世界的に広がってしまうことに手を貸してしまわないだろうか」という話が出ていました。けれども、最終的には「まずは話し合いの土台に乗らないことには、前に進めない」ということで参加を決めていった経緯があります。最終的には、いろんなものが混ざってしまうかもしれない。それでも、そういう人たちに啓発し続けるということが「国際遊びの日」の価値なんだというところに議論は落ち着いていきました。

最後に紹介したいのは、6月にオーストラリアで27年ぶりにIPAがアジア太平洋地域大会発表された「リスキープレイに関する見解声明」という政策提言です。これは、日本でも同じ状態にありますが、なんでもかんでも危ないからダメという文化を変えていきましょうという文書です。この見解声明では、特に8歳までの子どもが(こども家庭庁が示す「100ヶ月」と同じですよね)遊びの中で危険に触れることが、その先の人生にとても重要だということを広く発信することが目的となっています。この文書は、単に一団体が出したのではなく、教育や保育、遊び、野外活動、環境教育など各分野の実践者や専門家、保護者など数多くの人にインタビューを行い、1年半かけて取りまとめた声明になっています。

この見解声明は、いかに大人も子どもも含めて、リスクのリテラシーを持つのが大切かということ、それが子どもたちの不安の耐性に繋がり、怪我や危険に対する認知能力の向上に繋がるということです。そして、「現状はどうなっているのか」「これから、この社会はどうしたらいいのか」という3部構成になっています。これを見たときに、日本では何ができるだろうと考えました。子どもに関わる活動や仕事は数多くある一方で、このイシューで日本全国が1つにつながれるだろうかということを考え始めています。

重大事故は防がないといけません。不用意な危険を放置したまま危ないことに挑戦させましょうということではないわけです。とすると、日本ではまず子どもの育ちにとって遊ぶことが大切だという啓発を最初のステップにして、その先「どのように子どもたちが遊べるような社会を実現できるか」ということにつなげていく必要がありそうです。私からの話はここまでです。ありがとうございました。

 

 

神代洋一

6回子どもの権利条約31条のひろば2025(神代 発言録)

日時: 2025831日(日)18:0020:00

形式: オンライン

(神代 洋一・NPO法人東京少年少女センター理事長 雑誌「ちいきとこども」編集長)

嶋村さんが全体像についてお話しくださったので、私の方からは、実際に取り組んでいることを紹介しながら、先ほど嶋村さんが指摘された、地域・自治体レベルでどのような支援が必要なのか、そして、子どもは子ども同士で育ち合っていく、遊びを軸にした場づくりをどう進めていくのかについて、具体的な事例や、大学生・高校生が書いた考察を交えて報告します。

 

1. 目黒区における自治体への働きかけ

まず、自治体の問題です。私は目黒区に住んでおり、地域で外遊びの活動をしています。毎週金曜日の放課後に公園で遊ぶ「遊ぼう会」という取り組みです。目黒区内には、私たちを含めて公園で活動しているグループが4か所あり、この外遊びの場を行政としてしっかり支援してほしいと、今年6月に区議会の方に陳情を出しました。これは、外遊びが非常に大事だということを前提にした上で、行政としてのサポートを強化してほしいという内容です。

陳情は区議会の環境委員会で取り上げていただき、継続審査という形になりました。委員会に出席していた議員の皆さん、そして公園の運営や利用促進に関わる行政の担当者の方たちは、基本的に外遊びを大事だと認識しており、そうした活動が地域で進められていることについては誰も異論がありませんでした。総論賛成という状況です。

結果的に「今すぐどうこう」という決定はなかったものの、行政とは、外遊び団体が使いやすいように継続して相談に乗り、予算の範囲内でできることはやっていくという話ができました。実際、こちらが提案として「ベンチが少ない」「テーブルがない」という話をすると、早速「どこに設置したらいいですか」というお返事をいただくなど、具体的な進展もありました。

ただ、それは制度としての支援ではなく、あくまで要望を聞き、現在の仕組みの中でできる協力を行政として行うというものです。議会としても、行政に支援を行うよう要請する形で終わりました。

 

2. 政策転換の必要性

しかし、そこだけでは話は進まないと考えています。そもそも外遊びが大事だということを、単なる公園の管理の問題としてではなく、子ども・若者の育ちの問題、その支援の問題として捉えてもらう必要があります。

目黒区には、世田谷区のようなプレイパークはありません。隣接する渋谷区、大田区、世田谷区すべてにプレイパークがある中で、目黒区は頑として作らないできました。プレイパークという言葉に非常にアレルギーがあるのか、川崎の夢パークや世田谷の公園などを見学には行っているようですが、「目黒区ではね」といった感じで、そこについては消極的な姿勢がありました。

 

※ただし、最近(2025829日)になって、突然「プレイパーク」整備を示唆するような「新たな子どもの居場所づくり会議」が開催されました。しかし、長年活動を続けてきた地域団体への連絡がないなど、手続き上の課題も見られています、

ttps://www.city.meguro.tokyo.jp/documents/18670/20250829_2.pdf

 

'私たちは、この動きを踏まえつつ、引き続き、単にプレイパークを作るという場づくりの問題ではなく、子どもの遊び活動、外遊びの活動、子どもの権利条約31条に基づく権利の行使がきちんと保障されるような政策を区に作ってもらいたいと考えています。

夏休み明けに、子ども若者支援部と行政懇談を行う予定です。そこで、具体的にどういう支援をしてほしいのかを整理し、区議会にも働きかけていきます。できれば来年度の予算の中で、一つでも二つでも政策として、制度化までは難しくても、一定の突破口を開けられたらと思っています。

 

3. 最大の課題:「人」の支援

大きな柱となるのは、「人」の問題です。外遊びを活発にするといっても、子どもたちが自然発生的に活動を行うのは今ほとんど困難です。誰かが「こういう場所があるよ」「一緒に遊ぼう」「こんな遊びができるよ」と呼びかけをしつつ、その場を守っていかなければなりません。嶋村さんのお話にもあったように、場を一緒に作る大人の存在が非常に重要です。

しかし、これらの活動は今、完全にボランティアで、何の保証もありません。「事故があった時どうするの」という問いに対して、「ボランティア保険をかけてください」といったレベルに留まっていて、関わる人を増やし、自信を持って継続していくことへの「壁」になっています。ここをなんとか改善し、関わる大人のサポートを制度化していきたいと思います。

例えば、校庭開放などの「指導員」には謝礼が出る仕組みがある自治体があります。目黒区の「ランランひろば」でも、校庭や体育館を子どもたちに開放する施策があり、事業が委託され、指導員には報酬が支払われています。しかし、私たちはそうした施設型だけではなく、もっと自由な空間としての公園や広場の利用を広げたいと考えています。校庭という限定的な場所ではなく、子どもたちが自由に使える場所を広げていくことが必要です。そのため、場所を使えるという保証だけでなく、そこにスタッフを派遣・配置するような仕組みを政策として作ってほしいということを最も重視しています。

目黒区での取り組みは、今、世田谷区などの事例も出しながら話を進めていますが、ハードルが高いというか、壁が厚いと感じています。しかし、来年に向けて少しでも前に進んでいきたいというのが、今の活動の状況です。

 

4. 遊びを通じた子どもの主体性と成長

子ども食堂の取り組みが子どもの貧困という問題と結びついて全国に広がり、行政や様々な団体がサポートする状況が生まれています。それと同じように、あるいはそれ以上に、子どもたちの育ちにとって欠かすことのできない遊びについても、市民運動として広げつつ、行政や企業の支援を大きく取りつけていきたいと思っています。

学童保育が制度化される中で「安心・安全」が強調され、管理が厳しくなることで、学童保育が子どもたち自身にとって楽しく通える場所になっていない状況もたびたび見かけます。嶋村さんのお話にあった「子どもと関わる大人の資質」について考えることは大事だと思います。

 

(資料動画 AI作成)

「子どもの権利条約と東京少年少女センター」

 子どもは「守る」対象から「創る」パートナーへ:権利条約と地域活動が育む子どもの主体性

https://youtu.be/YD_-yuayElI?si=AzZdiqffBukJo4k3

 

少年少女センターでは、子どもたちや若者たちが遊び活動を中心にしながら、子どもの組織づくりを進めています。民主的な自主(自治)活動を重視し、こども・こそだての孤立が進む中で、「ひとりぼっちの子をなくそう」を合言葉に「子どもたちとともに地域活動・地域生活をつくる」実践を行ってきています。

先日、8月の「教育のつどい」という研究集会で、埼玉の大学生がレポートしてくれた内容に、とても良い言葉がありました。

https://drive.google.com/file/d/1V1JUCVZtcLuiPdblqQ5-tU1kd3ykPlnh/view?usp=sharing

「遊びはすごいと思っています。なぜなら、遊びはその場にいる人としか作れないのだからです」

特に、ドッジボール、陣取り、ドロケーといった集団的な遊びでは、異年齢の子や様々な背景を持つ人たちがいる場合、自分たちで話し合って決めなければ、みんなが楽しく遊べません。この過程で、子どもたちは自然と**『自治』**を育んでいきます。彼が言う『自治』とは、単に自分のやりたいことをやるのではなく、そこにいる仲間、その場を共有する仲間と一緒に『どうできるのか』を考える、その萌芽が31条が大切にしている遊び活動にあるということです。」

もう一つは**『共生』**という言い方をしていました。一人で遊ぶことも大事ですが、集団で遊ぶことを通して、多様な年齢や能力を持つ子どもたちが『共に生きる』ありかたを実践的に学んでいく場になっている、というものです。

「遊びは社会参加」と言いますが、遊びは子ども時代の育ちにとって大切だというだけでなく、そこで育つ子どもたちが大人になったときに、自分の育ちに対してどんな意味を持つのか、そのことも私たちが意識することが大事です。

 

5. 「仲間づくり」の困難と活動の意義

今、一番難しいのは、仲間を募って集団を形成する活動です。嶋村さんのデータでも、放課後ほとんど遊ばない子どもが3割から7割近くおり、一緒に遊ぶ友だちも少ないという状況があります。<一緒に遊ぶことが怖くなっている子ども>もたくさんいると感じています。

実際、子どもたちと会う中で、動いて遊びたい気持ちはあっても、どう遊んでいいか分からない。例えば夏に「セミ取りやりたい」と言うので、「じゃあ何人か誘って一緒に行ってみたら」と言うと、「無理。誰も来てくれないから」と、仲間を誘うこと自体に大きな壁を感じている様子です。自分のやりたい遊びを仲間と一緒に実現していく経験が、子どもたちの間で非常に薄くなっているのです。友だちへの信頼関係も、遊びの中で十分に育まれていません。

目黒区で放課後の居場所として開設されている「ランランひろば」(放課後や長期休みに校庭や体育館で遊べる)でも、学年が進むにつれて参加者が減るのは、塾や習い事の影響もありますが、一番大きな理由は「つまらない」「一緒に遊ぶ友だちがいない」ことです。場と大人が配置されていても適切な寄り添いや働きかけがないと、居続けることが難しくなっているのです。(https://www.city.meguro.tokyo.jp/documents/18868/1015-05.pdf

こういう中で、少年少女センターの「遊び仲間をつくろう」という呼びかけは、分厚い壁にぶつかって玉砕するような状況であり、全国で活動している団体の数も正直言って少なくなっています。

しかし、逆に活動を続けているところは非常に頑張っています。20年、30年、40年の歴史を経て、その中で子どもが青年になり、大人になり、親になり、その子がまた参加してくるという縦に長い繋がりを持った活動を続けている団体があるということを、ぜひ知ってもらいたいのです。遊びという場は、未来の可能性を持っていると私たちは思っています。

決まったプログラムにお客さんとして参加するのではなく、自分たちで作っていくということ、これは私たちの活動でも重要です。大きな行事の中で何度も集まって話し合い、作っていくことがたいせつです。

12月に「子どもの遊びと仲間を育てる全国集会」を福岡で行うのに向けて、子ども劇場に参加している高校生も含めて、全体会をどう作っていくのか、講演のテーマをどうするのかを一緒に話し合っています。

子どもが育っていく場をていねいに作り上げていく。これはイベントを一つやるということではなく、日々のくらしの中に落とし込んでいくという、大変な労力を伴うしごとですが、こういう活動こそが31条をベースにして、子どもの権利条約全体を豊かにしていくのだろうと思っています。

高校生の自主的な活動

先ほど、子どもたちが青年になり育っていくという話がありましたが、これは西東京の高校生が書いてくれた文章です。

https://drive.google.com/file/d/1NWN9YJuyENjZ_m8UrWq9ycwMns3Hi15Q/view?usp=sharing

彼女は小学生の時から活動に参加し、熱心に仲間を誘う活動もしていました。「5年生の時には、勝手にチラシを作って、毎月お友達に手渡ししていました」というほどです。なぜそうしたのかというと、子どもの側にも、学校や家庭で見せない、本当に自分になれる場所がそこにあったからです。そして、行事を若者と一緒に作っていく中で、自分の成長も感じることができました。

中学生の時にコロナ禍になり、高校生になってリーダーとして頑張ろうという時に地域の活動ができなくなってしまい、「自分の居場所がなくなってしまった」と、とても悲しんでいました。しかし、彼女はそこで諦めるのではなく、「なくなっちゃったなら自分たちで作ろう」と、高校2年生になる直前に3人で集まり、他の地域の青年や、それを支えてくれる親たちと一緒に**「ひまわり少年団」**という少年団を西東京に作り、毎月遊びを中心とした活動を続けています。

こうした思いを持つ子どもたちが「遊びが大事だ」と思えるのは、単に楽しかった、自己実現できたということだけではありません。それは、**権利条約の理念(表現、意見表明)**を踏まえ、何よりも私たちが大事にしている「子どもたちが子どもたち自身で、自分たちの実現のために活動していく」という団体・組織を、自ら作り出していくことがあって初めて、生きたものになってくるのだと考えています。

31条を大切だと言っている私たちが横に繋がって、これをどう政策化しようかと考えている。その子ども版の組織や活動がないと、本来の権利の実現にはならないのではないかと思っています。大人が「それは大事だよね。だからこんなふうに用意したよ、みんなの意見も取り入れたよ」というレベルでは、本当の意味での権利の実現には繋がっていかないのではないでしょうか。

少年少女センターの中で考えてきたことをお話しさせていただきました。31条のひろばに集うメンバーの中にも、少年少女センターに関わっていたり、関わってきた方が多くいます。様々な現場に行くと、「実は子ども時代、青年時代、センターの活動に参加していました。そこで得た体験は非常に大きな意味を持っており、今のそれぞれの地域や職場での実際の活動に生きています」と言われることは多々あります。

少年少女センターは半世紀、50年の歴史があるので、その成果を本当はもっともっと丁寧に皆さんに伝え、繋げていかなければならないと思っています。

 

政策提言にはなっていないかもしれませんが、以上で終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。